ブックタイトル薬局 69巻 4月号

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概要

薬局 69巻 4月号

特集にあたって名郷 直樹武蔵国分寺公園クリニック 院長所得格差は以前からあった.別に新しいことではない.しかし,それが問題とされなかった時代から,問題とされる時代に変わったというのが,新しいことだろう.以前問題とならなかった所得格差がなぜ今頃になって問題になるのか,それが問題である.一つは所得が伸びなくなったということだろう.個人個人の所得が伸びないだけでなく,国民総生産は人口の減少とともに減っていくのが今後の流れに違いない.もう一つは,価値が多様化して,何にどれだけお金をかけるかを決めるのが困難になっているということがあるかもしれない.健康や医療に費やすくらいなら,もっと別の幸せに使った方がいいと考える人も多くなっている.この2点で考えたときに,所得をさらに伸ばして解決するというのは困難であるし,健康に関しても,どんなに濃厚な医療を提供したところで最期は死んでしまうのを避けることはできない.所得が伸びない中で,あれにもこれにもお金を使いたいという中,医療にどれほどコストを振り向けるか,できればそれは最小限にしたいということが問題となっているのが現代である.そう整理できるかもしれない.そういう時代の中で,この特集が組まれた.少し視点を変えれば,たくさんお金が欲しいという欲望にも限界が訪れ,そんなに金持ちになったところで大して幸福になれず,より健康になりたいと思って健康にとことん気をつけ,医療に多くのコストを使ったところで大して幸せにはなれない,ということを多くの人が知ってしまった,というふうに言った方が通りがいいかもしれない.所得を増やそうという欲望も,より健康になりたいという欲望も,どちらもきりがなく,結局は不幸をもたらすだけ,そんな諦めの時代の,より幸せな生き方の模索の一つとして,この特集で何かを提供しようということである.安かろう,悪かろうの時代から,安いが,案外よかろうの時代へ,次に来たるべき新しい世の中を見据え,この特集がある.コストをかけない方がより幸福な時代,一切の医療を受けずに,保険料だけを払って死んでいく人生,それが最高,そんな時代の到来を告げる一歩がここに踏み出されていることを信じ,特集にあたっての序文としたい.p8 わが国の貧困問題の現状と展望p15 臨床の場で「患者の意向・希望」にどう応えるか?―Shared decision making(SDM)の視点から―p21 診療のプロが考える経済的負担を減らすための選択肢p89 エビデンスと経済合理性に基づいた薬剤選択指針“フォーミュラリー”の基礎と実践p101 国民皆保険,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジと高額医薬品特 集“経済的負担を軽減したい”患者の訴えにいかに応えるか6 2208 薬 局 2018 Vol.69, No.5 薬 局 2018 Vol.69, No.5 2209 7