ブックタイトル薬局 69巻 5月号

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概要

薬局 69巻 5月号

薬 局 2018 Vol.69, No.6 2379 25はじめに「かゆみ」の病態研究や治療法の開発は「痛み」と異なり基礎研究やEBMに基づいた研究はまだ少ないが,日常生活でのかゆみを伴う患者のQOLを考えるとき,極めて重要な問題である.日常診療ではかゆみに対して抗ヒスタミン薬が第一選択されることが多いが,アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis : AD)などの難治性,慢性のかゆみへの効果は必ずしも明らかではなく,服薬アドヒアランスが問題になることも多い.その理由として,かゆみを伴う皮膚疾患は多く,ヒスタミン以外にもかゆみを生じる物質,分子とその認知機構の存在が明らかにされてきたことや,皮膚という末梢組織のみでなく,中枢性のかゆみや,かゆみ感覚を増感させる機序が明らかになり,かゆみ認知がより複雑であることが日常診療でも理解され始めたことも大きな要因かと考える.本稿においてはADに代表されるかゆみを伴うアレルギー疾患や近年問題となっているがん患者のかゆみについても述べ,日常診療における患者の治療アドヒアランスをどう向上させるかを中心に考えてみたい.かゆみを伴う皮膚疾患と診断アルゴリズムかゆみは掻破行動を伴う不快な感覚と定義され,皮膚に存在するC線維と呼ばれる無髄神経により中枢に伝えられるが,掻きだすと気持ちがよくなり止まらないという患者をみ原発性皮膚病変による慢性?痒かゆみに対して抗ヒスタミン薬が選択されるが,アトピー性皮膚炎のかゆみへの効果は必ずしも明らかではない.ヒスタミン以外にもかゆみを生じる物質,分子とその認知機構が明らかにされてきた.皮膚という末梢組織のみでなく,中枢性のかゆみや,かゆみ感覚を増感させる機序が明らかにされた.かゆみの原因,基礎疾患は多様であり,安易な対症療法は原因の特定や診断を遅らせる.低分子の薬剤がMrgprB2というかゆみセンサーを介してヒスタミン遊離を惹起し,かゆみを誘発する新しい機序が報告されている.■ 慢性?痒の治療戦略! 重症度に応じた具体的スキーム?? ?片山 一朗大阪大学大学院医学系研究科 情報統合医学講座皮膚科学教室 教授Feature | かゆみ