ブックタイトル薬局 69巻 5月号

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概要

薬局 69巻 5月号

薬 局 2018 Vol.69, No.6 2387 33はじめにかゆみは維持血液透析患者の約60%にみられ,難治性で患者を悩ませる重要な疾患である1-4).DOPPS(Dialysis Outcomes andPractice Patterns Study)の報告でかゆみの強さは生存率と負の相関を示すことが明らかとなった4).新潟大学の成田教授のグループは,2,500人の維持透析患者にアンケートを行い,40%の患者が中等度から強度のかゆみを訴えていること,13%の患者にかゆみによる睡眠障害があることを報告した5, 6).しかし,透析患者のかゆみは原因がわからないために,われわれ内科医,透析医は副作用の強いステロイド,抗ヒスタミン薬,抗アレルギー薬を漫然と投与していた.医師はかゆみを1つの重要な疾患と捉えず,有効な薬剤という武器をもたないが故に,かゆみという疾患から目を背け,かゆみのケアは看護師や家族に任せていた.「患者のかゆみの機序を解明し,何とか治したい」という強い願いをもって,東レ株式会社が創製した新しいκ受容体作動薬ナルフラフィン(販売名:レミッチR,remission ofitch)を,既存薬が効かない血液透析患者337例に2週間経口投与し,プラセボとの二重盲検比較試験によってプロスペクティブに追跡した.その結果,ナルフラフィンにより,プラセボと比較してvisual analogue scale(VAS)で表されるかゆみの強さは有意に抑えられた7).慢性腎臓病・透析患者の慢性?痒~血液透析患者のかゆみの機序と,κ受容体作動薬ナルフラフィン(レミッチR)の臨床効果~透析患者のかゆみ治療として,十分な透析を行う,血清Ca・リン・PTHを抑制する,皮膚に湿気を与える,などの対策が重要である.全国で3万2,000人の血液透析患者がκ受容体作動薬ナルフラフィンを内服しており,そのうちの70 ~ 85%の患者で止痒効果が認められている.寝つきづらい感じを訴える患者は,透析後や昼食後にナルフラフィンを内服するとよい.止痒効果が認められる患者には,ステロイド外用剤,注射剤,睡眠薬,鎮静薬はなるべく減量・中止する.小さくて溶けやすいナルフラフィン口腔内崩壊(OD)錠が発売された.ナルフラフィンは,腹膜透析患者および慢性肝疾患のかゆみにも使えるようになった.■ 慢性?痒の治療戦略! 重症度に応じた具体的スキーム?? ?熊谷 裕生1) 江畑 俊哉2) 髙森 建二3) 中元 秀友4) 鈴木 洋通5)1) 防衛医科大学校 腎臓内分泌内科 教授 2) ちとふな皮膚科クリニック 院長3) 順天堂大学附属浦安病院 皮膚科学 名誉教授 4) 埼玉医科大学病院 総合診療内科 教授5) 武蔵野徳洲会病院 院長Feature | かゆみ