ブックタイトル薬局 69巻 5月号

ページ
12/22

このページは 薬局 69巻 5月号 の電子ブックに掲載されている12ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

薬局 69巻 5月号

46 2400 薬 局 2018 Vol.69, No.6はじめに皮膚病変を伴わない慢性のかゆみにはさまざまな病態が関係しており,慢性肝疾患がその例に挙げられることが多いが,一般には胆汁うっ滞(cholestasis)によるかゆみ(cholestaticitch)として分類される(表1)1).“Cholestaticitch”を生じる代表的な慢性肝疾患には原発性胆汁性胆管炎(primar y biliar y cholangitis :PBC)があり,その名称が2年前に原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis : PBC)から変更になったのは記憶に新しい.これは,PBCの診断が早期に可能となり,多くの例でウルソデオキシコール酸が著効を示すことから肝硬変に至るケースが少なくなってきたことに起因している.一方,ウルソデオキシコール酸により肝機能検査値が改善されてもかゆみ自体は軽減しないとされ,かゆみの発生機序にはいまだ不明な点が多く残されている.本稿では“ cholestaticitch”に関するこれまでの知見と,最近のトピックスにつき概説する.胆汁うっ滞による慢性?痒肝臓で作られた胆汁は,肝細胞間にある毛細胆管腔に排泄された後,より太い胆管を通じて十二指腸に排泄される.このいずれかの過程で胆汁の流れが障害された状態を胆汁うっ滞(cholestasis)という.胆汁うっ滞によるかゆみ(cholestatic itch)は皮膚病変を有さないかゆみの代表的なものであり,不眠,食欲不振,サーカディアン・リズムの変調などを来し,原疾患の増悪因子ともなりうる.“ Cholestatic itch”が胆汁中の胆汁酸に起因しているという仮説は,血中胆汁酸濃度とかゆみの程度が相関しないことから否定的とされてきた.一方,数年前にはオートタキシンにより産生されるリゾホスファチジン酸が“cholestatic itch”に関与するという説が提唱され,注目を集めた.しかし最近,小腸の胆汁酸吸収部位に存在する胆汁酸輸送タンパクを阻害することで“cholestatic itch”が改善したという報告がなされ,胆汁酸の役割が再評価されている.わが国で開発されたナルフラフィンはκオピオイド受容体作動薬で,かゆみを惹起するμ受容体を抑制することにより「慢性肝疾患」患者のかゆみに良好な効果が得られている.■ 慢性?痒の治療戦略! 重症度に応じた具体的スキーム?? ?北村 庸雄1) 髙森 建二2)1)順天堂大学医学部附属浦安病院 消化器内科 先任准教授2)順天堂大学大学院 環境医学研究所 所長