ブックタイトル薬局 69巻 5月号

ページ
18/22

このページは 薬局 69巻 5月号 の電子ブックに掲載されている18ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

薬局 69巻 5月号

薬 局 2018 Vol.69, No.6 2441 87難治性かゆみとオピオイドかゆみには抗ヒスタミン薬によってその多くが制御される末梢性のかゆみと抗ヒスタミン薬の治療に抵抗する中枢性のかゆみがある.中枢性のかゆみ発現にはオピオイドが関与している.体内で作られる内因性オピオイドペプチドにはエンドルフィン,エンケファリン,ダイノルフィン,エンドモルフィンがあり,かゆみ発現,かゆみ抑制に関与している内因性オピオイドペプチドにはβ-エンドルフィンとダイノルフィンがある.オピオイドペプチドは中枢神経や末梢神経に存在するオピオイド受容体への結合を介して作用を発揮する.かゆみに関与しているオピオイドシステムにはμ-システムとκ-システムがあり,生体内ではμ-受容体(MOR)にはβ-エンドルフィンが,κ-受容体(KOR)にはダイノルフィンが結合してそれぞれ生理作用を発揮する.これまでの研究からμ-オピオイド系はかゆみの発現に,κ-オピオイド系はかゆみの抑制に関与していることが知られている(図1).μ-オピオイド系がκ-オピオイド系より優位であればかゆみが誘発され,κ-オピオイド系が優位であればかゆみが抑制される1).難治性かゆみを呈するuremicpruritus では末梢血中のβ-エンドルフィン濃度がダイノルフィン濃度より高い傾向にあり2),末梢血リンパ球のMORとKORの発現量はMOR>KORの傾向があり,全身でμ-オピオイド系が優位になっている3).かゆみのない健常人ではMOR<KORの傾向があることから,κ-オピオイド系はかゆみ発現に抑制オピオイド受容体作動薬/拮抗薬かゆみは末梢性のかゆみと中枢性のかゆみに分類される.臨床的には抗ヒスタミン薬の奏効するかゆみと抗ヒスタミン薬が奏効しにくいかゆみ(難治性かゆみ)に分けられる.難治性かゆみの多くはオピオイドの発現異常が関与していることが多い.かゆみ発現に関与しているオピオイドペプチドにはβ-エンドルフィンとダイノルフィンがあり,それぞれμ-受容体とκ-受容体に結合してかゆみを制御している.μ-オピオイド系(β-エンドルフィン/μ-受容体)が優位であればかゆみが誘発され,κ-オピオイド系(ダイノルフィン/κ-受容体)が優位であればかゆみは抑制される.μ-受容体拮抗薬(ナロキソン,naltrexone)はかゆみを抑制するが,副作用が強いため臨床的にはほとんど使用されていない.κ-受容体作動薬(ナルフラフィン)は透析,肝疾患に伴う難治性かゆみを抑制する.■ この薬は“いつ”“どの患者で”“どう使う”? ?? ?髙森 建二順天堂大学大学院医学研究科 環境医学研究所 所長/順天堂大学 名誉教授・特任教授(皮膚科学)Feature | かゆみ