ブックタイトル薬局 69巻 5月号

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概要

薬局 69巻 5月号

104 2458 薬 局 2018 Vol.69, No.6はじめにかゆみは,「掻きたいという衝動を引き起こす不快な感覚(Pruritus is the“unpleasantsensation”the body produces that provokesa person to itch themselves)」として,ドイツ人医師Samuel Hafenref fer(1587―1660)により初めて定義された感覚である.その生理的意義については諸説唱えられているが,しばし対比される感覚として,「痛み」の場合では逃避行動(外からの危害を避けるための無意識的な反射活動)をもたらすのに対し,かゆみの場合,掻破行動(引っ掻き)を誘発し,異物除去,危険除去をもたらす.古くは,かゆみと言えば疥癬という,ヒゼンダニ(疥癬虫)が皮膚に寄生し,強いかゆみを生じる疾患に多くの人が罹患していた.寄生した虫をかき出すための防御反応として「掻く」ことを誘発する感覚(=かゆみ)は非常に合理的な感覚である.その一方で,かゆみは,制御できずに異常に活性化された際には不快な感覚をもたらし,病態を悪化させ,Quality of Life(QOL)の悪化につながるなど,制御すべき感覚でもある.本稿ではかゆみの基礎的な側面を簡単に紹介し,かゆみ治療薬の開発状況をまとめたい.かゆみの伝達マイクロニューログラフィを用いた研究により,かゆみが一次求心性神経の一つであるC線維によって伝達されることが明らかとなった.一次求心性神経は侵害受容ニューロンとして後根神経節(DRG)に細胞体をもち,その軸索を侵害受容線維として脊髄内と末梢に張り巡らせている.侵害受容線維には,表1のかゆみをターゲットとした医薬品開発の現状と展望近年の研究から,かゆみの誘発およびその増強因子として,サイトカインの重要性が明らかになった.デュピルマブ(抗IL―4RA抗体)やnemolizumab(抗IL―31RA抗体)投与2週間後に,アトピー性皮膚炎患者のかゆみが顕著に減少した.サイトカイン受容体下流シグナルであるヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害することによっても,アトピー性皮膚炎患者のかゆみ抑制効果が認められている.中枢性かゆみ治療薬として,オピオイドやサブスタンスP,胆汁酸を標的とした治療薬の開発が行われている.石井 直人株式会社カン研究所