ブックタイトル薬局 69巻 5月号

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概要

薬局 69巻 5月号

特集にあたって髙森 建二順天堂大学大学院医学研究科 環境医学研究所 所長かゆみとは掻きたい衝動を引き起こす不快な感覚と定義されており,病原体,昆虫,植物など外部からの有害物質に対する生体の自己防衛システムとして,あるいは内臓の異常を知らせるサインとして機能していることが知られている.かゆみは掻破を誘導し,掻破は表皮ケラチノサイトから炎症性サイトカインの遊離を惹起し,さらなるかゆみの増強を来す(itch-scratch cycle).かゆみを制御するにはこのサイクルのどこかをブロックする必要がある.かゆみ感覚には末梢性と中枢性がある.末梢性かゆみとは無髄神経のC線維神経終末が活性化され,その興奮が皮膚から後根神経節,脊髄後角,脊髄視床路,大脳皮質に達して生じるかゆみである.神経終末に存在する受容体に結合して,かゆみを惹起するかゆみメディエータにはヒスタミンのほかトリプターゼやカテプシンのようなプロテアーゼ,TNF-α,IL―31,TSLPなどのサイトカイン,サブスタンスPなど多くの起痒物質が知られている.中枢性かゆみはオピオイドの関与するかゆみで,抗ヒスタミン薬では制御できないかゆみである.抗ヒスタミン薬の奏効しないかゆみ(難治性かゆみ)には腎不全,尿毒症などの腎疾患,腎不全に伴う血液透析,胆汁うっ滞性肝硬変などの肝疾患,乾癬,結節性痒疹,アミロイド苔癬,アトピー性皮膚炎などがあり,その原因としてヒスタミン以外の起痒物質(プロテアーゼ,サイトカインなど)がかゆみを惹起している場合,ヒスタミンH4受容体がかゆみ誘発に関与している場合,表皮内神経線維が外部刺激により直接活性化される場合,オピオイドがかゆみを誘発している場合などがある.アトピー性皮膚炎のかゆみ発現には多様なかゆみ発現メカニズムが関与しているため,抗ヒスタミン薬だけでは制御することができない.かゆみ対策としてはその疾患のかゆみがいかなるメカニズムにより惹起されているかを考えて対策を講じる必要がある.従来,かゆみは痛みの弱い感覚と考えられ,かゆみのメカニズムと治療法の研究は長い間低迷していた.しかし,かゆみが痛みよりもQOLを著しく低下させることから,近年かゆみの研究が盛んに行われるようになり,かゆみのメカニズムや新しい治療法が明らかになってきている.本特集では難治性?痒を呈する疾患に焦点をあて,そのかゆみ発現メカニズムと対処法について,それぞれの分野の第一人者に解説していただいた.本特集が患者からのかゆみ相談に少しでも役に立ち,患者がかゆみのつらさから少しでも解放され,QOLの改善が得られるならば本特集を企画した意味があり,喜びである.p9 かゆみの発生・慢性化とかゆみ過敏のメカニズムp18 かゆみの評価と治療効果の考え方p25 慢性?痒の治療戦略! 重症度に応じた具体的スキームp66 この薬は“いつ”“どの患者で”“どう使う”?p104 かゆみをターゲットとした医薬品開発の現状と展望特 集治療薬を使いこなす“知識”と“ノウハウ”6 2360 薬 局 2018 Vol.69, No.6 薬 局 2018 Vol.69, No.6 2361 7