ブックタイトル薬局 69巻 5月号

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概要

薬局 69巻 5月号

薬 局 2018 Vol.69, No.6 2363 9はじめにかゆみは「掻破したいという欲望を起こさせる不快な感覚」として定義されている.またかゆみは,外部異物(昆虫,植物,アレルゲンなど)の体内への侵入(自己防衛反応)や全身の異常(疾患発症)をわれわれに知らせる警告でもある.かゆみは主に末梢器官である皮膚や一部の粘膜組織(結膜など)で生じる.本稿では,皮膚から脊髄に至るかゆみの発生,慢性化および過敏性のメカニズムを中心に最近の知見を交えて概説する.かゆみの成因からみた分類かゆみは発現経路に基づいて,末梢性かゆみと中枢性かゆみの2つに大別される1).1 末梢性のかゆみ末梢性のかゆみとは,皮膚に分布する感覚神経線維(主にC線維)が衣服の擦れなどの機械刺激やヒスタミン,プロテアーゼなどの化学刺激によって興奮することで生じるかゆみのことである(図1a).2 中枢性のかゆみ中枢性のかゆみとは脊髄や脳が感作されて生じるかゆみや,これら中枢神経系に直接かゆみ刺激が作用することで生じるかゆみのことである.中枢性かゆみの例として,鎮痛薬のモルヒネによって誘発されるかゆみがあり,この場合にはμオピオイド受容体(MOR)がかゆみの発生・慢性化とかゆみ過敏のメカニズムかゆみはその発現経路から末梢性と中枢性のかゆみに大別される.ヒスタミン以外に多くの起痒物質が存在する.GRP,BNP,グルタミン酸およびサブスタンスPはかゆみの情報伝達に関与する.MrgprA3およびGRPを発現する神経線維はかゆみの発生に関与する感覚神経である.表皮内神経線維の増生はかゆみ過敏の一因である.Th2サイトカイン(IL―4,IL―13)および活性化した脊髄グリア細胞はかゆみの増強・慢性化に関与する.冨永 光俊1*) 加茂 敦子2) 鎌田 弥生1**) 髙森 建二1***)1) 順天堂大学大学院医学研究科 環境医学研究所 *先任准教授 **助教 ***所長2) 順天堂大学 医療看護学部 准教授Feature | かゆみ