ブックタイトル薬局69巻7月号

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概要

薬局69巻7月号

38 2680 薬 局 2018 Vol.69, No.8はじめにマラリア,デング熱,ジカウイルス感染症,ウエストナイル熱,チクングニア熱,黄熱,日本脳炎.これらは蚊が媒介する感染症である.WHOが2017年に発表したレポートによると,2016年の年間のマラリア患者数は2億1,600万人,死者は44万5,000人である1).蚊が媒介する感染症は熱帯地域で発生を続けており,蚊が媒介する感染症対策は世界的に重要な課題である.蚊媒介感染症の対策としては,殺虫剤を用いた直接的な防除やワクチンなどが重要であるが,蚊に刺されないようにすることでも感染を防ぐことが可能である.その場合,人体用の忌避剤を使用することが多いが,日本においては疾病を媒介する昆虫を「衛生害虫」と定め,その駆除や忌避を目的とする殺虫剤および忌避剤は医薬品医療機器等法に定められた手続きを経て承認され,販売されている.衛生害虫とは「ハエ,蚊,ダニ,ノミ,マダニ,ねずみ」などが該当し,蚊は衛生害虫であるため承認されたものが販売されている(表1).本稿では,医薬品医療機器等法上の承認が得られた「防除用医薬部外品」と「医薬品」を中心に解説する.蚊の忌避蚊を忌避する方法は2つある.1つめは,蚊取り線香などを利用する方法である.蚊取り線香に代表される蚊取り製剤は,有効成分であるピレスロイド系殺虫成分を放出して蚊を駆除する.このピレスロイド系殺虫成分は濃度が低く駆除効果が見込めない場合でも蚊の吸血行動を阻害することが知られている.そのため,蚊取り線香やファン式蚊取り製剤には効能・効果として「屋外の蚊成虫の忌避」が認められているものがある.ただし,屋外での使用においては環境状況により体の周囲に有効成分が滞留しにくくなるため,忌避効果が低くなってしまうという欠点がある.2つめは,蚊が嫌がる成分を肌に塗布する衛生害虫に用いる忌避剤の種類と特徴人体用忌避剤の有効成分はDEET(ディート,ジエチルトルアミド)とイカリジンである.人体用忌避剤の初期効果は100%である.塗りむらなく塗布することでより効果的に蚊対策ができる.■ 忌避剤・殺虫剤の基礎知識:有効性と安全性 ???佐々木 智基フマキラー株式会社 開発研究部応用開発研究室 室長