ブックタイトル薬局69巻7月号

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概要

薬局69巻7月号

56 2698 薬 局 2018 Vol.69, No.8はじめに東日本大震災が発生した2011年,筆者はハエ類やカ類など衛生害虫の発生状況を調査するため,東北の津波被災地を3度訪れた.震災の約3ヵ月後にあたる6月初旬に初めて宮城県石巻市を訪れた時には,市内全域を魚の腐敗臭が覆い,避難所周辺には数多くのハエ類が飛び回っていた.避難所として使われていた中学校の体育館は入り口や窓が常時開放され,イエバエを中心としたハエ類が自由に出入りできる状況にあり,そこで生活されておられる方々に大きな精神的ストレスを与えた.本稿では,筆者が被災地で実際に目にしたハエの種類や発生状況,そして震災時のハエ対策法などについて紹介したい.東北の津波被災地で大発生したハエ類東日本大震災は関東から東北北部まで広範囲にわたって人々の生活に影響を与えたが,ハエの問題が深刻だったのは宮城県の石巻市や気仙沼市といった日本有数の漁港がある地域である.この地域の沿岸には魚介類の保管庫や加工工場,魚粉を使った肥料工場などが多数存在し,津波によってこれらの施設から大量の魚介類が流出した.住宅街や水田などに散乱した魚介類は気温の上昇とともに腐敗し,そこに飛来したハエ類が産卵し,大量のうじ虫が発生,やがてそれらが成虫になり,多数のハエ類成虫が爆発的に発生することとなった.震災直後には,まず寒い季節に活動するオオクロバエ(図1a)やケブカクロバエといった,体長1.3cmほどにもなる大型のハエ類が発生した.夏場を高冷地で過ごすオオクハ エイエバエは他のハエ類に比べて屋内への侵入性が高く,病原性大腸菌の媒介性が高いため,被災地において特に注意を要するハエ種である.腐敗した魚介類から最も多く発生するのはキンバエやオオクロバエである.避難所や仮設住宅においてはハエ類が侵入しにくいようにメッシュのカーテンを設置したり,網戸を設置することが重要である.ハエの仲間は衛生害虫や不快害虫である反面,有機物を効率よく分解する益虫でもある.■ 医療従事者が押さえておきたい衛生害虫防除のポイント ???葛西 真治国立感染症研究所 昆虫医科学部 第三室長