ブックタイトル薬局69巻7月号

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概要

薬局69巻7月号

74 2716 薬 局 2018 Vol.69, No.8ゴキブリの問題点ゴキブリは活動時期に屋内を歩き回ることができ,しかも人間の食材に誘引され好んで摂食するので,消化器系の感染症患者あるいは中毒現場から病原菌を運ぶ衛生害虫として極めて危険な昆虫であった.衛生施設や医薬の進歩により感染のおそれは低下している.しかし,ゴキブリが人間以外の動物に潜在する(腸管出血性大腸菌O157のような)病原菌や中毒菌,さらに消化器系以外の病原体も運ぶ可能性があり,これはハエについても言える.一方,人々はゴキブリを見ることさえ忌み嫌い,それは人々の神経を害する病的なストレスともなっている.近年では人々の清潔志向が高まり,また精密製品への微小な異物混入も許されない.ゴキブリの製品への混入は企業に大きな被害を与えるものである.屋内で見られる日本のゴキブリの種類と分布1 種 類ゴキブリはおよそ5,000種が知られているが,そのうち人間の屋内施設で普通に見られ,問題となる種類はわずか数種類で,ほとんどゴキブリ日本の屋内ゴキブリは,温帯性大型種のクロゴキブリ,ヤマトゴキブリ,熱帯性大型種のワモンゴキブリ,小型種のチャバネゴキブリが主要な種類である.種類により生息地域や環境が異なる.ゴキブリ発生数の多さは,餌,飲み水,隠れ場所に依存しており,特に食品や残渣の管理不良の場所に大発生がみられる.小型種のチャバネゴキブリは発育速度が速く(卵から成虫まで2ヵ月ほど),大発生しやすい.大型種,特に温帯性種は途中で休眠越冬を経過するので,成虫になるまでに1.5 ~ 2年かかる.対策には,トラップ使用によるモニタリングにより,侵入経路,潜伏場所,活動場所,の状況を判断し,環境整備,ベイト剤その他の薬剤処理を行う.対策の効果判定も同仕様のトラップで判断できる.クロゴキブリ,ヤマトゴキブリは温帯の屋外の普通種で,毎年侵入するためか殺虫剤に対する抵抗性がほとんどなく殺虫が容易である.屋内定着のチャバネゴキブリでは抵抗性により駆除が困難な場合があり,環境改善や薬剤変更が一層必要で,駆除の専門家との相談も必要となる.■ 医療従事者が押さえておきたい衛生害虫防除のポイント ???辻 英明環境生物研究会 代表