ブックタイトル薬局69巻7月号

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概要

薬局69巻7月号

薬 局 2018 Vol.69, No.8 2753 111はじめにヒゼンダニは生涯を宿主の体表で過ごす終生寄生虫で,宿主特異性が高く,ヒトや動物にそれぞれ固有のヒゼンダニが存在する.疥癬は,ヒト固有のヒゼンダニによって起こる痒みの強い皮膚疾患である.一方,ペットや家畜が動物固有のヒゼンダニによる疥癬に罹患し,ヒトがその動物に接触して皮膚炎を生じることがあり,これを動物疥癬という.ヒトに害を及ぼすシラミは,頭髪に寄生するアタマジラミ,衣類に生息するコロモジラミ,陰毛などに寄生するケジラミである.第二次世界大戦後,コロモジラミが媒介する発疹チフス対策としてジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT,有機塩素系殺虫剤)撒布が行われ,シラミは激減した.しかし,海外旅行の増えた1970年代頃より性感染症であるケジラミ症が増え始め,1980年代にはアタマジラミ症が幼小児に多発してきた1).急遽ピレスロイド系殺虫剤フェノトリンパウダー(スミスリンRパウダー)が市販され,いったん減少したが,1990年頃よりアタマジラミ症,ケジラミ症,コロモジラミ症とも再び増加し,特にアタマジラミ症で薬剤耐性が問題となっている.本稿では,疥癬,動物疥癬,ケジラミ症,アタマジラミ症,コロモジラミ症の特徴・治療・対処法について示す.また,ストレスなどを契機にこれらの寄生虫症に罹患したと確信し,思い悩む寄生虫症妄想の症例が時にみられるので,併せて紹介する.ヒゼンダニ・シラミ疥癬では,腹部,大腿などに強い痒みを伴う紅斑性丘疹がみられる.診断のポイントは手足の疥癬トンネル,陰部の小結節である.疥癬の標準治療は,内服薬イベルメクチン(ストロメクトールR 3mg)あるいは外用薬フェノトリン(スミスリンRローション)を1週間隔で2回投与する.重症例では投与回数の追加,両者の併用を検討する.通常疥癬の対処法は,掃除・洗濯は普通でよく,部屋に殺虫剤を撒布する必要はない.角化型疥癬では,隔離,介護者の手袋・ガウン着用,洗濯物の熱処理(50℃,10分)あるいはピレスロイド系殺虫剤撒布,部屋の殺虫剤撒布などが必要となる.アタマジラミ症の治療は,0.4%フェノトリン(スミスリンRシャンプープレミアム,スミスリンR LシャンプータイプあるいはスミスリンRパウダー)を使用する.効果がない場合はシラミ除去用の櫛を用いるか,剃毛を行う.■ 医療従事者が押さえておきたい衛生害虫防除のポイント ???谷口 裕子* 大滝 倫子**九段坂病院 皮膚科 *部長 **顧問Feature | 衛生害虫対策