ブックタイトル薬局69巻7月号

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概要

薬局69巻7月号

薬 局 2018 Vol.69, No.8 2659 17はじめに人や動物に害を与える動物を総じて「衛生動物」という.その種類は,べん毛虫や胞子虫などの原生動物から,昆虫を含む節足動物,軟体動物,脊椎動物に至る広範な動物種を網羅し多岐にわたる.その中で,ヒトに被害を及ぼす節足動物を「衛生害虫」あるいは「衛生昆虫」と呼ぶ.マダニやツツガムシ,クモやサソリは昆虫ではないが,外見が昆虫とよく似ていることから,昆虫の仲間として「衛生害虫」と呼ばれることも多い.「衛生動物学」は,人の心身の健康に直接・間接に関わる動物を扱い,それによって起こる疾患の発症機構・予防・治療などを科学する学問である.衛生動物がもたらす被害の中で,蚊やマダニなど吸血性の節足動物が病原体を媒介することはよく知られるが,それ以外に吸血被害や刺咬被害,アレルギーの源になる,不快になるなど,多種多様な被害と影響を及ぼしている.本稿では,病原体媒介虫としての衛生害虫の役割に注目し,蚊とマダニが関わる感染症とその媒介者(ベクター)について解説する.蚊媒介感染症蚊は,世界中に3,500種以上,日本国内には約110種が生息する.吸血によって病原体を取り込み,デング熱,日本脳炎,ウエストナ衛生害虫の病原体媒介虫としての役割と衛生動物学の重要性衛生動物学は,人の心身の健康に直接・間接に関わる動物を扱い,それによって起こる疾患の発症機構・予防・治療などを科学する学問であり,社会的重要性や国際的な役割は増している.衛生動物がもたらす被害の中で,蚊やマダニなど吸血性の節足動物が病原体を媒介する以外にもさまざまな被害がある.節足動物が媒介する感染症には,人や家畜,野生動物への共通の被害も多く,人獣共通感染症の観点からOne Healthの認識に立ち,多分野との連携と協力が必要である.人や物流のグローバル化により,国内に侵入してくる外来感染症の脅威は増す一方である.感染症法により四類感染症に分類された感染症を診察した医師は,最寄りの保健所への届け出が義務づけられている.■ 衛生害虫によるヒトへの健康被害 ???沢辺 京子国立感染症研究所 昆虫医科学部 部長Feature | 衛生害虫対策