ブックタイトル薬局69巻7月号

ページ
9/22

このページは 薬局69巻7月号 の電子ブックに掲載されている9ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

薬局69巻7月号

薬 局 2018 Vol.69, No.8 2669 27はじめに衛生害虫による皮膚疾患として,虫刺症,アレルギーを起こす虫,病原体を媒介する虫によるものが挙げられる.虫刺症とは,一般的には昆虫・ダニが吸血,あるいは針で刺すものをいうが,広義には,体液が付着して皮膚炎を起こすものや,ムカデ,クモによる皮膚炎も含まれる.刺虫アレルギーには,ハチ,ムカデなどによる即時型アレルギーがあり,アナフィラキシーショックなど重篤な症状を起こすことがある.コナヒョウヒダニ,ヤケヒョウヒダニは刺す虫ではないが,皮膚に付着あるいは吸入することでアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を悪化させる.病原体を媒介する虫では,マダニ(日本紅斑熱,ライム病,重症熱性血小板減少症候群),ツツガムシ(つつが虫病),蚊(デング熱,ジカ熱,チクングニア熱)などが皮膚症状を呈する.疥癬は皮膚の角層にヒゼンダニが寄生することで生じる,痒みの強い感染症である.高齢者が病院や施設などで感染し,介護者や家族にも感染が拡大することがあり,問題となっている.本稿では,身近な虫刺症,疥癬の臨床像を示し,診断のポイントや対処法を紹介する.また,危険な虫刺症,病原体を媒介する虫について付記する.衛生害虫による皮膚疾患を見逃さないためのポイント虫刺症では,中心に刺点のある膨疹,紅斑が非対称的に偏在してみられる.イエダニ対策は宿主となるネズミの駆除が必須である.トコジラミは宿泊先などから自宅に持ち込んでしまうと,駆除が難しく,保健所などに相談する必要がある.疥癬では,腹部,大腿などに強い痒みを伴う紅斑性丘疹がみられる.診断のポイントは手足の疥癬トンネル,陰部の小結節である.危険な虫刺症として,ハチアレルギー,重症型蚊刺過敏症がある.病原体を媒介する虫では,マダニ(日本紅斑熱,ライム病,重症熱性血小板減少症候群),ツツガムシ(つつが虫病),蚊(デング熱,ジカ熱,チクングニア熱)などが皮膚症状を呈する.■ 衛生害虫によるヒトへの健康被害 ???谷口 裕子* 大滝 倫子**九段坂病院 皮膚科 *部長 **顧問Feature | 衛生害虫対策