ブックタイトルRp.+2016年冬号

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概要

Rp.+2016年冬号

048 Vol.15,No.1なぜ心房細動に抗血小板薬を選択せずに抗凝固薬を選択するのか抗血栓療法の大原則 動脈血栓=抗血小板療法,静脈血栓=抗凝固療法 血栓には「動脈血栓」と「静脈血栓」があり,血栓の種類に応じた治療を行う必要があります(図1).動脈血栓は動脈硬化性病変に生じやすく,その主体は血小板による血栓です.つまり,動脈血栓には抗血小板療法(アスピリン)が適応となります.一方,静脈血栓の好発部位は血流のうっ滞・低流速の部位に生じやすく,フィブリン・赤血球が血栓の主体です.よって,静脈血栓には抗凝固療法(ワルファリン,NOAC)が適応となります.ゆえに「なぜ心房細動に抗血小板薬を選択せずに抗凝固薬を選択するのか」という問いに,静脈血栓の本体がフィブリンであるからと答えることができます.すなわち,抗血小板薬でフィブリン生成を抑制することはできませんが,ワルファリンでなら,フィブリン生成を抑制することができるからです.アスピリンでは非弁膜症性心房細動患者の脳梗塞は予防できない 低リスクの非弁膜症性心房細動患者に対するアスピリンの脳梗塞予防効果を検証したJAST試験の結果によれば,アスピリン150~200mg/dayの投与では脳梗塞予防効果はなく,そればかりか重大な出血性合併症が増加する傾向があることがわかりました1).一方,29の大規模臨床試験を集めて解析したメタ解析では,ワルファリンの脳梗塞予防効果はきわめて有効であることが証明されました2).別のメタ解析でもワルファリンの脳梗塞予防効果は明らかにアスピリンよりも優れていることが示されました3).このことから日本循環器学会4)とアジア太平洋不整脈学会5)のガイドラインでは,アスピリンを非弁膜症性心房細動患者の脳梗塞予防には推奨していません.表1のような違いが出ているのは,ガイドラインを作成する際に参考あるいは引用した大規模臨床研究の対象集団の人種によるところも大きいと考えられます.幸いわが国は日本人を対象としたJAST試験があるため,自国のガイドラインに臨床研究の結果を活用することが可能であったわけです.このような背景と理由から,非弁膜症性心房細動患者の脳梗塞予防にはワルファリンが使用されています.入門! 経口抗凝固療法処方のねらいと考え方2