ブックタイトルRp.+レシピプラス2016年春号

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概要

Rp.+レシピプラス2016年春号

Vol.15,No.2 003 1921年,カナダのF.G.バンティング,J.J.R.マクラウドがインスリンを発見する以前は糖尿病,特に1型糖尿病の治療には飢餓療法しかなく,多くの人々が糖尿病性ケトアシドーシスによって亡くなる暗黒の時代であった.インスリンは直ちに臨床応用され,この人々を救った成果によりバンティングとマクラウドは1923年にノーベル医学生理学賞の栄誉に輝いた. しかしながら,これで糖尿病の治療は完結せず,次の戦いは糖尿病の慢性合併症である糖尿病網膜症,糖尿病腎症,糖尿病神経症といった細小血管障害をいかに抑制するかの戦いになった.そのためには血糖変動をいかに正常人に近づけるかが課題となった.生体内でインスリンは常時分泌され,肝臓での糖新生を制御している基礎分泌と,食事のたびに分泌され,急な血糖の上昇を抑える追加分泌に分けることができ,次のインスリン療法の課題はインスリンアレルギーの改善を目指すヒト型インスリンの開発に加えて,作用時間の面からは基礎分泌を担う長時間作用型インスリンの開発と,追加分泌を担うための注射直後に効き始め,効果の比較的短い速効型インスリンの開発の歴史であった.その結果,1980年後半,遺伝子組み換え製剤が開発され,2001年にはインスリンアナログ製剤が登場している.さらに,腸管から分泌されるGLPやGIPと言ったインクレチンのインスリン分泌に対する重要性が明らかになり,インクレチン関連注射製剤が開発された.これらの製剤は血糖コントロールだけでなく,食欲抑制効果も認められ,欧米では抗肥満薬としても使われている. このようにインスリンの発見以来,過去100年の間にインスリン製剤は大きく進歩・改良され,さらにインクレチン製剤が加わることにより,糖尿病の診療は大きな変遷を遂げてきている.本特集ではインスリン製剤を中心に糖尿病治療における注射製剤の位置づけや導入の適応,その使用量や注射のタイミングについて実際の臨床例に基づいてわかりやすく解説いただいた.東邦大学医学部内科学講座糖尿病代謝内分泌分野(佐倉)東邦大学医療センター佐倉病院糖尿病・内分泌・代謝センター 教授 龍野一郎製剤