ブックタイトルRp.+レシピプラス2016年春号

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概要

Rp.+レシピプラス2016年春号

018 Vol.15,No.2 インスリン6量体の安定化剤として,フェノールではなくクレゾールが入っている場合もあります.インスリン製剤の個性を紐解く2つの視点 現在薬価収載されているインスリン製剤をインスリンの組成によって分類すると,ヒトインスリン製剤とインスリンアナログ製剤に大別することができます.ヒトインスリン製剤とは,文字通りヒトのインスリンと同じアミノ酸配列をもつインスリンを製剤化したものであり,インスリンアナログ製剤は,ヒトインスリンのアミノ酸配列あるいは構造を一部修飾し,ヒトインスリンと類似した構造(アナログ)をもつインスリンを製剤化したものです. また,インスリン製剤を体内動態の違いから,生理的なインスリン分泌パターンにあてはめて分類すると,追加分泌を補う製剤,基礎分泌を補う製剤,そして追加分泌と基礎分泌の両方を補う製剤に分類できます(図1).しかし,ただ漠然と図を眺めているだけでは「なぜ分類ごとに体内動態が違うのか?」という,インスリン製剤がもつ本質的な特徴を理解することはできません.しかし,インスリンの皮下組織からの吸収とインスリンの構造という2つの視点に着目するだけで,意外なほど簡単に,それでいて理論的に「なるほど!」と理解することができます. それでは,インスリン製剤の個性を紐解く2つの視点について確認していきましょう.インスリンの皮下組織からの吸収 まず,皮下組織に注射されたインスリンがどのように血液中に吸収されるか考えてみましょう.通常インスリンは,高濃度の溶液中では,2分子のインスリンが静電的に結合し2量体を形成し,さらに亜鉛イオンや安定化剤として入っているフェノールなどの存在下で,その2量体が3個集まった6量体の状態で存在します.しかし,皮下に投与された6量体のインスリンは,分子量が大きすぎるために血管壁を通過できず,血液中へ移行することができません.皮下組織で希釈されることにより,6量体から2量体,2量体から単量体へと解離していき,分子量が小さくなった2量体と単量体の状態で,初めて血液中に吸収されるのです(図2).このことから,インスリン製剤の体内動態の違いは,インスリンの皮下組織から血液中への吸収動態の違いと言い換えることができます.インスリン製剤の「かたち」「はたらき」「うごき」薬物治療の本質を理解するための基礎知識2