ブックタイトルRp+2017年冬号

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概要

Rp+2017年冬号

Vol.16,No.1 003 “かぜ”は救急外来や一般内科外来でもっともよく出会う疾患ですが,その病名が良くも悪くも曖昧に使われていることが多いでしょう.このことにはいくつか理由があります.ひとつは,かぜかどうかは臨床判断であって,医療機関を受診してもかぜを引き起こしているウイルスのほとんどは同定することはできません.よって,本当にかぜかどうかについて,医師は100%確信をもっていないというのが事実です.しかもそのほとんどは自然によくなるのです.つまりかぜはまさに“セルフケア疾患”なのです.そして,ぜひ,薬局の力を貸していただきたい疾患ナンバーワンです.ところが,かぜの判断は意外にわかりにくいと思われている人も多いでしょう.というのも,かぜの大きな特徴は多症状であることです.このことから,どんな症状でもかぜによる一症状の可能性があるようにみえ,かぜを定義してきちんと分類する努力をしていないとなんでもかぜにみえてきます.したがって,かぜは医師にとっても患者にとってもなんともいえない曖昧な疾患となります. また,かぜ診療では治療から予防まで明確にエビデンスのあるものがきわめて限られます.特に,かぜ薬を“かぜを引き起こすウイルスに共通に効果のあるもの”と定義した場合には,そのような薬は存在しませんし,もし創ることができたらノーベル賞とも言われます.かぜウイルスに万能な抗ウイルス薬はありませんので,対症療法としてのアプローチは病院と薬局で大きく変わらない印象です.しかし,そんなことは一般の方はあまり知りません.また,対症療法や感染予防グッズ(手指衛生アルコール製剤,マスク,のど飴…)は薬局の方がはるかに充実しているでしょう.「かぜは薬局へ」という流れはこれからの医療経済の問題にも大きく影響します.さらに,抗菌薬が出せない薬局でかぜをみていただくことは,耐性菌増加を食い止める一つの戦略にもなると考えます.ぜひ,力を貸してください.そのサポートをいたします.総合診療医・感染症医Sapporo Medical Academy 代表理事 岸田直樹