ブックタイトルRp+2017年冬号

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概要

Rp+2017年冬号

006 Vol.16,No.1かぜ症状をみるポイント 「通常成人は1年間に3~4回はかぜに罹患するが,そのほとんどが各種ウイルスによる急性上気道炎であり,軽症であれば罹患者の大部分が自宅療養で自然治癒する」と日本呼吸器学会のガイドラインにも記載されているように,かぜはきわめてよくある疾患です1).しかも注目すべきは,「大部分が自宅療養で自然治癒する」というところで,セルフケアが重要な領域です.また,かぜの原因ウイルスに対応する抗ウイルス薬は実は存在しないことは周知の事実で,もし真のかぜ薬(万能な抗ウイルス薬)を作ったらノーベル賞がとれると言われています.それにもかかわらず,医療機関ではかぜ症状に対して抗菌薬がよく処方されています.抗菌薬を濫用すると副作用(下痢や発疹などのアレルギー)が起こるだけではなく,今や世界的な問題となっている耐性菌を出現させることになります.この耐性菌の増加は医療対策上の著しい不利益となることも,上記ガイドラインにしっかり明記されているのです.しかし,くり返しますが,実際のかぜ診療では抗菌薬処方が後を絶ちません.市販のいわゆる「かぜ薬」は,症状を緩和することを目的として用いる対症療法薬に過ぎないことも明記されているのですが,現在問題視されている医療機関のポリファーマシーでもっともよくみかけるのは,かぜの各症状に対する処方ではないでしょうか? 咳止め,鼻炎薬,抗炎症薬,解熱薬,去痰薬,うがい薬,トローチ,抗菌薬,胃薬…,とたくさんの薬が処方されていますが,そのすべてが必要かはとても悩ましいところです. 抗菌薬の濫用が原因のひとつとなって,耐性菌が驚異的なスピードで増えている現状があります.2014年のWHOの報告書は衝撃的な内容です2).「耐性菌の広がりはAIDS以上の脅威であり,よくある普通の感染症で死ぬ時代はそれほど遠くはない」という強烈なメッセージを伝えており,もはや他人事ではすまされないのです.では,どうしたらよいでしょうか? まず,大切なことは,かぜ(ウイルス性上気道感染症)は医療機関を受診しても確定することはできない“あいまい疾患”であると認識することです.かぜの確定診断は,ウイルス性上気道感染症という言い方からわかるように,ウイルスが上気道に悪さをしていることを微生物学的に証明しなくてはいけません.ところが,医療機関を受診しても微生物学的な確定診断は原則できないのです.というのも,かぜを引き起こすウイルスは200以上あり,そかぜ症状をみる・きく・よむ高齢者が訴える「かぜ症状」に対応するための基本1