ブックタイトルRp+2017年冬号

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概要

Rp+2017年冬号

044 Vol.16,No.1なぜ,ニューキノロン系抗菌薬は抗菌活性があるのか? ニューキノロン系抗菌薬(以下:NQ)は,高齢者の市中肺炎やかぜの急性増悪症状など呼吸器感染症の治療あるいは予防に対して“切り札的な薬剤”として使用されています.近年では,従来のキノロン系抗菌薬よりも良好な肺移行性と広い抗菌スペクトルをもつレスピラトリーキノロンとよばれる製剤が続々と発売されています.ところでNQの作用機序については,添付文書上「DNAジャイレース(以下:DNAgyr)とトポイソメラーゼⅣ(以下:TopoⅣ)を阻害し,DNA複製を阻止する」などの記載で,耳慣れない用語や「DNA」という言葉への苦手意識をもつ方も多いのではないでしょうか.NQのように,文章だけでは薬理作用を理解し難い薬剤の場合では,少し視点を変えて化学構造から捉えたほうが,より効率的かつ理論的に理解を深めていける場合があります.今回はNQの抗菌活性メカニズムを理解するために,「なぜNQは抗菌活性があるのか?」を化学構造の『かたち』を活用し,“ざっくり”と“わかりやすく”解説します.ニューキノロン系抗菌薬は核酸塩基のニセモノ!? 図1に代表的なNQの化学構造を示しました.すると図1の構造にはすべて4-キノリノン構造が含まれていることがわかります.この共通構造がNQの基本骨格で,通称4-キノリノン骨格ともよばれています,それではなぜNQは基本骨格に4 -キノリノン骨格を有しているのでしょうか. 細菌のDNA2本鎖はアデニン(A)とチミン(T),グアニン(G)とシトシン(C)が,水素結合を介した相補的な塩基対を組むことにより安定な二重らせん構造を形成しています(図2).「あれ,なんか似ているな」と気付きましたか? 見比べると各塩基構造と4-キノリノン骨格のシルエットや部分構造が類似しています(図3).この4-キノリノン骨格と核酸塩基の構造が似ている事実こそ,NQが酵素であるDNAgyrやTopoⅣを阻害するための必須な“かたち”です.この理由は,まず細菌の細胞内にNQが入り込む必要があります.そのとき同じような構造を間違えて取り込んでしまうアバウトな性質をもつ細菌は核酸塩基と構造上類似ニューキノロン系抗菌薬の「かたち」高齢者が訴える「かぜ症状」に対応するための基本7